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沖縄県では、今、静かながらも重要な変革が起きています。それは、長年地域を支えてきた企業が次世代へとバトンを渡す「事業承継」の波です。

観光業のイメージが強い沖縄ですが、実は県内企業のほとんどの中小企業・小規模事業者が、県民の日常生活を支える重要な役割を担っています。

これらの企業が培ってきた技術、ノウハウ、そして地域とのつながりを次世代に継承することは、沖縄経済の持続的発展にとって極めて重要な課題となっています。

しかし、この承継の過程で生まれているのは、単なる世代交代ではありません。伝統を守りながらも革新を恐れない、新しい時代のアトツギ企業たちが、沖縄の未来を切り拓く挑戦を始めています。

全国的な後継者不足の課題を抱えながらも、沖縄では独自のアプローチで事業承継に取り組む企業が増えています。IT技術を駆使した効率化、持続可能な経営への転換、そして地域社会への新たな価値提供をしている沖縄のアトツギ企業の可能性と具体的な企業をご紹介します。

1. 沖縄の事業承継の概要

後継者とM&Aの現状

沖縄県の事業承継を取り巻く環境は、全国的な傾向と同様に厳しい状況にあります。2023年に実施された調査によると、県内全業種約2200社のうち、後継者が「いない」または「未定」と回答した企業の割合は66.4%となり、前年より1.3ポイント低下しました。2011年から2020年まで全国で最も高い不在率を記録していた沖縄県ですが、近年は改善が続き、2023年には全国で5番目の不在率となりました。

【引用元】:沖縄県の事業承継・M&A動向!公的事業承継支援や事例・案件も紹介

この改善には、自治体や金融機関による事業承継の相談窓口の普及、M&Aや事業譲渡、ファンドを活用した再建型の事業承継支援の広がりが影響しており、経営者や後継者候補において事業承継の重要性が広く認識されるようになったことが背景にあると考えられます。

M&Aについては、新型コロナウイルスに旅行者が激減したことを受け、特にホテル業界では休廃業・解散に至る事業者も多く存在しましたが、ここ数年では経営再建を目的とした事業承継や大手企業による事業エリア拡大を図るためのM&Aが活発化しています。近年は観光業の回復を背景に、沖縄特有の事業承継・M&A案件も増加傾向にあります。

2. 後継企業で働く魅力と課題感

後継企業で働く魅力

地域に根ざした揺るぎない事業基盤と地域との信頼関係

沖縄の後継企業で働く最大の魅力は、長年その地域で築き上げてきた事業基盤と信頼関係があることです。地域での信頼関係、独自のノウハウ、そして沖縄特有の文化や風土を活かしたビジネスモデルを活かしつつ、地域に貢献できることが魅力です。

イノベーションの機会

後継経営者がイノベーションタイプだと、これまでの既存事業を基板に革新的なチャレンジが行われています。もしくは、新規事業や既存事業の改革にも試みている企業もあります。伝統を守りつつ、時代に合わせた変革を実現できる点が大きな魅力となっています。

早期の幹部登用機会

後継企業では、優秀な人材に対して早い段階から幹部としての責任と権限を与える機会があります。大企業では数十年かかる管理職への道のりも、後継企業では実力次第で短期間での昇進が可能です。事業承継期には特に組織変革が活発になるため、若手社員であっても経営陣に近いポジションで重要な意思決定に関わるチャンスが豊富にあります。次世代経営者と一緒に会社の未来を描き、実現していく醍醐味を味わえるのは後継企業ならではの魅力です。

社会貢献への使命感

後継経営者は非常に経営と地域のバランス感覚を持って経営をしています。上場企業は株価や株主を見据えて短期的な経営に終始するが、こうのような地域の老舗企業は、中長期的な地域にとって本当に価値のある公益性の高いことにもチャレンジできるという醍醐味です。多くの後継企業が「地域への恩返し」「沖縄経済への貢献」といった強い使命感を持っており、単なる利益追求を超えた価値創造に取り組んでいます。

課題感

経営スキルや人脈の継承

先代から後継者への経営ノウハウや人脈の継承は時間を要する重要な課題です。特に、沖縄特有の商習慣や人間関係の理解には時間がかかります。

資金調達と財務基盤

事業承継時の株式承継や設備投資に必要な資金調達、また承継後の経営安定化までの財務基盤の構築が課題となっています。

人材確保と育成

少子高齢化の進行により、優秀な人材の確保が困難になっており、特に専門的なスキルを持つ人材の育成が急務となっています。

市場環境の変化への対応

デジタル化の進展、消費者ニーズの多様化、グローバル化の進展など、急激な市場環境の変化への対応が求められています。

3. 次世代を引っ張る沖縄のアトツギ企業8選

沖縄には素晴らしい経営を行う次世代のアトツギ企業が多数存在します。以下では、その中でも特に注目すべき企業をご紹介します。沖縄県内の若手経営者の顔と言える魅力溢れる次代の経営者の方々です。

株式会社okicom

創業45年を迎えた沖縄のITソリューション企業okicomは、事業承継における模範的な成長企業として注目されています。同社は企業・自治体の抱える様々な課題に対してITとノウハウを提供し、解決を支援しているITソリューションのパートナー企業として、長年培ってきた技術力と地域密着の営業力を次世代に継承しています。

特に注目すべきは、同社が掲げる「ミライ企業」というビジョンです。これは単なる企業理念ではなく、事業承継後の持続的成長を見据えた戦略的コンセプトです。「いろんな可能性があるという社風を創り、良い人材が入ってくることで、企業が存続する上で無限可能性に挑戦していくことが大事」という考えのもと、次世代経営陣である小渡 晋治氏が伝統的なIT事業に新しい価値を加えながら企業を発展させています。

後継経営者:小渡 晋治 取締役副社長

株式会社okicom 取締役副社長。1982年生まれ、早稲田大学卒。米系投資銀行で資金調達に従事後、シンガポール経営大学でMBA取得。2017年に事業承継のため沖縄へ帰郷し、DXと新規事業を牽引。泡盛の排水処理やかりゆし在庫管理のデジタル化、琉球びんがたの知財活用、循環型アパレル「Bagasse UPCYCLE」など、文化と産業をつなぐ実装を進める。宜野湾市スマートシティ推進協議会委員。

公式サイト:株式会社okicom(https://okicom.co.jp/

株式会社福地組

沖縄の建設業界において長年の実績を持つ福地組は、住宅建築から設計まで一貫したサービスを提供する地域密着型企業として、次世代への技術継承と革新を両立させています。建設業界特有の職人技術と現代的な設計ノウハウを融合させ、沖縄の住環境向上に貢献しながら、持続可能な事業運営を実現している事業承継の成功例です。

2024年9月にもともと築33年のスナックビルだった建物をリノベーションし、コワーキングスペースやカフェなどを新設した「HAVE A GOOD DAY」を開始するなど独自の展開を広げています。

後継経営者:福地 一仁 代表取締役社長

1983年、沖縄・嘉手納町出身。東京大学大学院修了後、三菱商事で海外事業やJV設立・PMIに従事。2018年に株式会社福地組へ参画し、2021年より代表取締役社長。子会社「リノベース」を立ち上げ、既存ストック活用とZEH普及を軸に“まちづくり”を推進。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授として産学連携にも取り組む。

公式サイト:株式会社福地組(https://www.fukuchigumi.co.jp/

求人情報はこちら:https://rs-okinawa.net/job?search_city1=&search_income_min=&search_keyword=福地組

株式会社座波商会

1951年創業の座波商会は、沖縄の事業承継企業の中でも特に革新的な取り組みで注目される企業です。不動産業・建設業という伝統的事業を基盤としながら、時代の変化に対応した新規事業への参入を積極的に展開しています。

現経営陣は東京でITベンチャーやサイバーエージェントでの経験を積んだ後、2015年に同社に入社し、既存事業とのシナジーを狙った新規事業を手がけています。この「外の視点」と「地域の基盤」を融合させたアプローチは、従来の親族承継とは異なる新しい事業承継のモデルケースとして評価されています。

後継経営者:住吉 基伸 代表取締役社長

1978年生まれ。ITベンチャーを経て2005年にサイバーエージェント入社。2015年、座波商会(旧マチナト興産)に参画し、新規事業とグループ連携を推進。マチナトハウジング代表も務め、2024年に座波商会 代表取締役社長就任。現在は「第二創業期」の旗振り役として、那覇・東町でのホテル開業プロジェクトなど、地域の資産を再編集する事業に挑む

公式サイト:株式会社 座波商会(https://zaha.co.jp/

求人上はこちら:https://rs-okinawa.net/job?search_city1=&search_income_min=&search_keyword=座波商会

中部興産株式会社

創業42年を迎える中部興産は、「第2創業期」というコンセプトのもと、事業承継を機により強固な経営基盤の構築を目指している企業です。新垣貴雪代表取締役のリーダーシップの下、生活提案企業として「医・食・住」の価値創造と快適な住環境づくりを提供するという明確なミッションを掲げています。全国賃貸住宅新聞社が発表した「管理戸数ランキング2025」において、九州・沖縄エリアで3年連続のトップ10入り。沖縄県内においては10年以上にわたり管理戸数1位を継続。

同社の事業承継戦略で注目すべきは、継承を単なる世代交代ではなく「変革の機会」として捉えている点です。「これからを『第2創業期』ととらえ、今まで築き上げてきた基盤をより強固にし更なる発展を遂げるために、改めて組織全体に新たな風を取り込み、お客様へのサービス提供を活性化させていきたい」という方針は、事業承継を成長戦略として活用する優れた事例です。

後継経営者:新垣 貴雪 代表取締役社長

1987年生まれ。沖縄市出身。米国での大学生活を経て帰国後、事業のDXと業務改革を牽引し、2022年に社長就任。賃貸管理の現場にアプリ連携やVR内覧を導入し、非対面でも高品質な接客を実現。“プロパティマネジメントによる徹底的な問題解決”を掲げ、収益性と顧客体験の両立を進めている。

公式サイト:中部興産株式会社(https://www.chubu-kosan.co.jp/

求人情報はこちら:https://rs-okinawa.net/job?search_city1=&search_income_min=&search_keyword=中部興産

農業生産法人株式会社熱帯資源植物研究所

1989年の創業以来、沖縄の農業分野で技術革新を続けている熱帯資源植物研究所は、農業×研究開発という独自のビジネスモデルを確立し、次世代への技術承継と新たな価値創造を両立している企業です。

同社の事業承継における強みは、単なる農業生産にとどまらない「研究開発型農業」を確立している点です。洋ラン生産から始まり、パパイヤ、マンゴー、パッションフルーツ、アテモヤ、ウコンなど多品種展開を実現し、さらに有用微生物の応用技術開発により、国内外への技術展開も行っています。「萬寿のしずく」ブランドでの高付加価値農産物生産は、沖縄農業の可能性を次世代に継承する優れたモデルとなっています。

後継経営者:名護 健 代表取締役

2008年に社長就任後、胡蝶蘭「フラワーステーション」を祖業に、秋ウコン・グァバ・月桃・バガスなど沖縄由来素材の研究開発と食品製造を拡大。ISO22000取得や自社圃場の体制整備で品質を底上げし、Salesforce導入で受注から納品までのリアルタイム連携を実装。“沖縄の自然資源を価値化する”産地発の実装力で地域産業の可能性を広げている。

公式サイト:農業生産法人株式会社熱帯資源植物研究所(https://tpr-net.co.jp/

新光産業株式会社

地域に根ざした電気設備の専門店として長年営業を続けている新光産業は、沖縄県民の生活インフラを支える重要な役割を担っています。電気設備工事やメンテナンスという専門技術を次世代に継承しながら、デジタル化時代に対応した新しいサービス展開も行っている事業承継企業です。同社のような地域密着型の専門技術企業の存続は、沖縄経済の基盤維持において極めて重要な意味を持っています。

後継経営者:新里 正志 代表取締役社長

1975年創業の同社で、電気・空調・水まわり等の設備資材を中核に、県内6拠点ネットワークで公共施設から住宅までを支える。2016年、若手社長として事業承継し“第二創業期”を宣言。以後、現場起点の改善と制度づくりを進め、沖縄県ワーク・ライフ・バランス認証やおきなわSDGsパートナー登録など、組織と地域に向けた取り組みを強化している。合言葉は「光・風・水」—快適な環境づくりで地域に貢献。

公式サイト:新光産業株式会社(https://shinkousangyou.jp/

求人情報はこちら:https://rs-okinawa.net/job?search_income_type=1&search_keyword=新光産業

株式会社オフィスシステムプロダクト

沖縄県内企業のデジタル化推進を支援するオフィスシステムプロダクトは、OA機器導入からITサポート、業務改善まで総合的なサービスを提供する企業として、地域経済のDX化において重要な役割を果たしています。コロナ禍を経て加速したデジタル化ニーズに対応しながら、地域企業の競争力向上を支援する同社の事業は、沖縄経済の持続的発展に不可欠な存在となっています。

後継経営者:石坂清道 代表取締役社長

1984年創業以来、複合機・情報通信機器・ソフトウェアの販売/保守を核に、那覇・中部・石垣の拠点で企業のオフィス環境を支える。父である創業者の急逝に伴い2004年に家業を若くして事業承継後、現場起点の改善と人材育成を進め、全社で“沖縄ナンバーワンの働きがいのある会社”を目標に掲げる。取引は3,000社超。2022年にはCYBOZU AWARD「エリア賞(九州・沖縄)」も受賞。

公式サイト:株式会社オフィスシステムプロダクト(https://osp-okinawa.jp/

求人情報はこちら:https://rs-okinawa.net/job?search_income_type=1&search_keyword=オフィスシステムプロダクト

南島酒販株式会社

南島酒販株式会社は1979年創業の“沖縄の総合酒類卸”。泡盛・オリオンビールをはじめ県産酒類全般、国産/海外ビール、焼酎、日本酒、ワイン、洋酒まで幅広く取り扱い、県内外へ安定供給する体制を整えています。資本金4,800万円、従業員約100名。売上は2020年度79億円→2024年度111億円と伸長(本社:沖縄県中頭郡西原町)。グループに東京南島酒販、南島食品、ガイア物産、ぎぼ酒店、泰石酒造、識名酒造などを擁し、県産酒の価値発信を強化。2023年度には中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定されています。自社プロジェクトでは瑞泉酒造と組んだ高付加価値泡盛「尚覚」を発売、共同開発ブランド「shimmer」も品評会で最高賞を獲得するなど、“つくり手と市場をつなぐ”取り組みを加速しています。

後継経営者:大岩 健太郎 代表取締役社長

1982年、沖縄県南風原町生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リョーショクリカー(現・三菱食品)勤務を経て2007年に南島酒販へ。2017年4月に代表取締役社長就任。創業者・大岩馗一郎の志を継ぎ、県産酒流通の強化と新規ブランド開発、M&A・グループ連携までを統括。近年は県内全蔵とのネットワークを基盤に、高付加価値商品の企画や県外展開を推進し、事業成長と地域産業の発展を両立させる経営をリード。

公式サイト:南島酒販株式会社(https://nanto-shuhan.com/

まとめ

沖縄の事業承継を取り巻く環境は改善傾向にあるものの、依然として多くの課題が存在します。しかし、本記事で紹介したような優秀な次世代経営者たちが、伝統を継承しながら革新的な取り組みを行うことで、沖縄経済の持続的発展に大きく貢献しています。

上記の跡継ぎ企業の中途採用では、既存事業が手堅く事業成長しており、既存事業の人員募集(若手~マネジメント層)もさることながら、既存事業を強くするための間接部門(管理部門やIT/DXの系)の募集も旺盛にあります。また既存事業だけでなく、新規事業開発や立上げの募集も非常に旺盛にあるのが特徴です。

これからの沖縄をリードしていくアトツギ企業に魅力を感じ、働いてみたいと思った方はお気軽にご相談ください。

ウェビナーのお知らせ

レキサンでは、沖縄での転職を考えている方向けに、『沖縄で働くって何から始めたらいい?〜沖縄県でのキャリアの探し方とUIターンの実例紹介〜』というテーマでオンラインウェビナーを開催します。 沖縄にUIターンされた方のインタビュー動画をもとに、5つのセクションに分けてUIターン転職の流れや転職市場の動向などを解説していきます。

<ウェビナー概要①>

【開催日】 :10月4日(土)
【日時】  :9:00〜10:00
【対象者】 :沖縄県へのUIターン転職を検討している方
【費用】  :無料
【開催形式】:Google meet

<ウェビナー概要②>

【開催日】 :10月18日(土)
【日時】  :9:00〜10:00
【対象者】 :沖縄県へのUIターン転職を検討している方
【費用】  :無料
【開催形式】:Google meet
※当日ご参加いただけない場合でもアーカイブ配信をご用意しております。(当日分ではなく、過去の収録による動画の可能性もあります。) ※ウェビナーでは2024年に決定した最新の転職者事例もご紹介いたします。

<開催方法>

■オンラインウェビナー ※本ウェビナーはGoogle meetで実施します。Googleアカウントがなくても参加可能です。詳しくは、以下のリンクよりご確認ください。

<こんな方にお届けしたいウェビナーです>

「WEB検索では見つけられない沖縄本社の魅力的な企業や求人を知りたい」 「公開されていないハイクラス求人へのアクセス方法が知りたい」 「都市部でキャリアを積んだUIターン転職者の実例が知りたい」 本ウェビナーは、このような疑問や不安を解消し、UIターン転職を検討をするための情報収集の場になればと考えております。

<注意事項>

※本ウェビナーの受付は、当日の開始時間1時間前を締め切りとさせていただきます。 ※同業他社様の参加はご遠慮くださいますようお願いいたします。

<参加・申し込みフォーム>

   
【開催日】 :①10月4日(土)②10月18日(土)
【日時】  :9:00〜10:00
【対象者】 :沖縄県へのUIターン転職を検討している方
【費用】  :無料
【開催形式】:Google meet
島村 賢太 Shimamura Kenta
キャリアコンサルタント
沖縄県石垣島生まれ。横浜国立大学を卒業後、株式会社リクルートへ入社。その後「リージョナルキャリア長野」において人材紹介業の営業職、コンサルタント職として従事。沖縄にUターン後、株式会社レキサンを設立し、代表取締役に。3児の父であり、休日は子供とMinecraftに勤しんでいる。

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