沖縄移住で子育て世帯が知っておきたい公立高校寮制度とは?
沖縄移住を考える子育て世帯の中には、「子どもの高校進学にはどんな選択肢があるのか」「離島での教育環境はどうなっているのか」といった現地の教育制度についての疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、意外と知られていない沖縄の「公立高校寮制度」について詳しく解説します。沖縄には本土では珍しいこの制度が充実しており、移住家庭にとって一つの選択肢になるかもしれません。ご家族で沖縄移住をご検討中の方にとって、参考となれば幸いです。
本土では珍しい公立高校寮制度
本土の多くの地域では、高校に寮がある学校として私立の進学校やスポーツ強豪校を思い浮かべる方が多いでしょう。公立高校で寮制度を持つ学校は非常に限られています。
ところが沖縄では、普通科の公立高校でも寮を持つ学校が数多く存在します。これは県外出身者にとって意外なことかもしれません。
1. 39の有人離島が生んだ独特の教育制度
沖縄に公立高校の寮制度が発達した最大の理由は、地理的特性にあります。沖縄県には39もの有人離島があり、その多くに高等学校がないのが現状です。
宮古島や石垣島には高等学校がある一方で、伊是名島、伊平屋島、粟国島、渡名喜島、久米島、北大東島、南大東島など、多くの離島には高等学校がありません。
そのため、これらの島で中学校を卒業した生徒たちは、高校教育を受けるために沖縄本島に出てくる必要があります。この「教育機会の均等化」という理念のもと、公立高校に寮制度が整備されました。
2. 離島振興の重要な施策として
この寮制度は単なる教育支援にとどまらず、離島振興の重要な施策としても機能しています。離島では若者が教育のために島を離れることで人口減少が進むという課題があります。そうした中で、安心して子どもを本島に送り出せる環境があることは、離島の家庭にとって大きな安心材料となっているのです。
それでは実際に、沖縄にはどのような公立高校寮があるのでしょうか。
代表的な5つの公立高校寮 ― 番外編:沖縄高専学生寮
沖縄の代表的な5つの公立高校寮に加え、番外編として沖縄高専学生寮をご紹介します。
※本記事の情報は2025年9月現在のものです。最新の情報については各施設にお問い合わせください。
1. 群星(むるぶし)寮(那覇市)
沖縄県立離島児童生徒支援センターとして2016年1月に開所した比較的新しい施設です。
- 定員:40名
- 月額費用:37,300円(食費・光熱費込み)
- 特徴:沖縄本島中南部地域の高等学校に通学可能
- 詳細情報・お問い合わせ先:https://www.pref.okinawa.jp/kyoiku/gakko/1008814/1024053/1008801.html
群星寮は単なる宿泊施設ではなく、離島振興につながる交流拠点としての機能も持っています。施設内には120の寮室を備えた総合寄宿舎となっており、交流室では小・中・高校生の交流の場としても活用されています。また、教員免許を持つ職員を含む約15名のスタッフが寮生の生活をサポートしており、学業面から健康管理まで充実した支援体制が整っています。
2. 図南(となん)寮(八重瀬町)
沖縄県立向陽高等学校の大規模寮施設です。
- 定員:100名(男子50名、女子50名)
- 月額費用:36,500円(食費・維持費込み)
- 特徴:鉄筋コンクリート3階建て、食堂・浴室・洗濯室・談話室完備
- 詳細情報・お問い合わせ先:http://www.koyo-h.open.ed.jp/tonan.html
図南寮は2名1部屋の相部屋制となっており、規律ある共同生活を通じた人格形成も重視されています。各寮生室にはベッドと学習机が備え付けられているほか、食堂・浴室・洗濯室・談話室などの共用施設も充実しています。また、朝の点呼から消灯時間まで明確な日課表に基づいた生活指導が行われており、寮生活そのものが教育の一環として位置づけられています。
3. 黒潮寮(糸満市)
沖縄県立沖縄水産高等学校の専門寮です。
- 定員:52名
- 月額費用:43,000円程度(食費・光熱費込み)
- 詳細情報・お問い合わせ先:http://www.okisui-h.open.ed.jp/kurosioryou.html
黒潮寮は水産業に関する専門教育に特化した寮となっており、海洋技術や栽培漁業などの専門分野を学ぶ生徒が実習と学習に集中できる環境が整えられています。また、航海士などの国家資格取得を目指す生徒への支援体制も充実しており、将来の水産業界を担う人材育成に力を入れています。
4. 北星寮(大宜味村)
沖縄県立辺土名高等学校のアットホームな寮です。
- 定員:50名(男子33名、女子17名)
- 月額費用:22,000円程度(光熱費・食費込み)
- 特徴:沖縄本島北部の自然豊かな環境、学校敷地内隣接で徒歩1分
- 詳細情報・お問い合わせ先:http://www.hentona-h.open.ed.jp/hokuseiryou.html
比較的小規模な寮ながら、アットホームな雰囲気の中で寮生活を送ることができます。2004年に完成した全室個室の寄宿舎で、各部屋にはクーラーが完備されており快適な環境です。また、入寮式やスポーツ大会、季節ごとのイベントなど交流活動も活発に行われており、和気あいあいとした寮生活が特徴です。
5. 青藍寮(南風原町)
沖縄県立開邦高等学校の大規模寮施設です。
- 定員:204名(男子110名、女子94名)
- 月額費用:お問い合わせください
- 特徴:学校隣接地で通学便利、土日祝日も食事提供
- 詳細情報・お問い合わせ先:http://www.kaiho-h.open.ed.jp/about.html
青藍寮は2名1部屋の相部屋制で、102部屋を備えた県内最大規模の公立高校寮です。委託調理業者による朝・昼・夕の3食が提供され、土日祝日も食事があるため安心して寮生活を送ることができます。また、音楽科の生徒には個別レッスンの時間が設定されるなど、学科の特性に応じた細やかな配慮も行われています。
6.【番外編】沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)学生寮(名護市)
※高専は「中学卒から5年一貫の国立の高等教育機関」で、高校と大学の中間に位置します。高校寮とは制度上の区分が異なりますが、「15歳からの進学先」という観点で移住家庭の選択肢になり得るため、参考として掲載します。
- 定員:546室(男子408室・女子138室、原則全室個室)
- 月額費用:寄宿料800円+寮管理費4,300円+食費約39,000円+居室電気料(実費)〔令和6年度目安〕
- 特徴:主に通学困難者を対象(1〜2年生は優先、3年生以上は審査)
- 詳細情報・お問い合わせ先:https://www.okinawa-ct.ac.jp/campus_life/dormitories/
学生寮はA棟(女子)・B棟(男子)・C棟(共用)の3棟構成で、校舎とは連絡橋でつながる利便性の高い立地です。現在は全学生約870名のうち約540名が寮生活を送る全国最大級規模です。カードキーや防犯カメラ、赤外線センサーに加え、教職員が交代で宿直するなど安全管理体制も整っています。平日は21:00〜23:00が学習時間帯、消灯は23:30(試験前は最大1:00まで延長可)。食事は1日3食提供で、3食利用時の目安は1日1,300円です。
ここまでご紹介した5つの公立高校寮に加え、番外編として沖縄高専学生寮を含めた費用比較をまとめてみました。
各寮の費用比較
寮名 | 所在地 | 定員(目安) | 月額費用(目安) |
---|---|---|---|
北星寮 | 大宜味村 | 50名 | 22,000円程度 |
図南寮 | 八重瀬町 | 100名 | 36,500円 |
群星寮 | 那覇市 | 40名 | 37,300円 |
黒潮寮 | 糸満市 | 52名 | 43,000円程度 |
青藍寮 | 南風原町 | 204名 | お問い合わせください |
沖縄高専寮 | 名護市 | 546名 | 44,100円程度 |
私立高校寮との費用差は2倍以上
私立高校寮の費用について
沖縄の私立高校にも寮制度がありますが、費用が大幅に異なります。公立高校寮と私立高校寮の費用差について、比較してみましょう。
例えば沖縄尚学高等学校の「尚学グローバル寮」では、月額86,500円から92,700円(食事付き)の寮費に加えて、入寮費50,000円、維持管理費50,000円、退寮時清掃費15,000円などの追加費用が必要です。これは公立高校寮の約2.5倍にあたる費用設定となっています。
町営寮という選択肢も
公立と私立の中間的な選択肢として、町営寮という制度もあります。久米島町が運営する町営寮「じんぶん館」では月額42,000円の寮費で利用でき、全国から集まった15歳の高校生が共同生活を送りながら、地域密着型の特色ある教育プログラムを受けることができます。
このように、沖縄には様々な選択肢があり、家庭の経済状況や教育方針に応じて選択することが可能です。
移住家庭が知っておくべき3つのポイント
1. 入寮条件と選考について
公立高校寮の多くは離島出身者を主な対象としていますが、本島内の遠隔地からの通学困難者や、定員に余裕がある場合は県外出身者も受け入れています。 入寮は寮務委員会等による選考が行われ、経済的事情や居住地からの通学距離などを総合的に考慮して決定されます。 入寮を希望する場合は、志望する高校や沖縄県教育委員会に事前に相談することをお勧めします。
2. 申し込み時期と手続き
寮の申し込みは高校入試の合格発表後、2月から3月頃にかけて行われるのが一般的です。書類提出期限や追加募集のスケジュールは高校ごとに異なります。 説明会や体験入寮を実施している高校もあるため、移住を検討している場合は早めの情報収集と準備が重要です。
3. 年間費用の計画
公立高校の寮費は月額2万円から4万円程度が相場で、年間では約24万円から48万円の出費となります。移住前の教育費計画に組み込んでおくことが重要です。 私立高校の寮費と比較すると経済的負担は軽減されますが、家庭の予算計画には十分な検討が必要です。
まとめ
沖縄の公立高校寮制度は、離島が多いという地理的特性から生まれた独特の教育インフラです。移住を考える子育て世帯にとって、子どもの高校進学における一つの選択肢として参考になる制度です。
制度を活用する際は、入寮条件や申し込み手続きについて事前に各施設に確認し、十分な準備をして臨むことをお勧めします。
私たちレキサンは、沖縄での転職支援を中心に、移住を検討される方の様々なご相談にも対応しています。沖縄での転職や生活に関する具体的な情報をお求めの方は、お気軽にご相談ください。
ウェビナーのお知らせ

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【開催形式】:Google meet
<ウェビナー概要②>
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【対象者】 :沖縄県へのUIターン転職を検討している方
【費用】 :無料
【開催形式】:Google meet