移住前にチェック!沖縄の中学・高校受験の特徴とルールを解説
こんにちは!レキサンスタッフです。
沖縄は、温暖な気候や自然、文化など多くの魅力にあふれています。一方で、子育て世帯にとって気になるのが「子どもの教育環境」。特に高校受験は、「学区制度」や、「内申点の比重が高い」といった沖縄ならではの特徴があります。
こうした制度を知らずに移住すると、進路の選択肢を狭めてしまう可能性も…。
本記事では、沖縄の学校事情から、教育環境を重視した移住エリア選びのポイントまでわかりやすくご紹介します。
沖縄の中学・高校受験と教育環境の特色
記事を今ご覧頂いている方の中には、沖縄県は「学力が低い」というイメージの方もいらっしゃるかもしれません。実際に2007年からの7年間、沖縄県は全国最下位でした。
しかし、2014年には全国最下位を脱出し、同年度の小学校算数Aでは全国6位という好成績を収めました。近年は全国との学力差はほとんど改善されており、特色ある魅力的な学校も多くあります。例えば、文部科学省が科学技術や理数教育を重点的に行う高校を指定するSSH指定校(全国で225校指定)が沖縄にも2校(球陽中学・高校、向陽高校)あります。
SSH指定校では、独自のカリキュラムや研究発表の実施、さらに沖縄では沖縄科学技術大学院大学(OIST)での研修なども行われています。
では、そんな沖縄の学校事情と、沖縄特有のルールについて見ていきたいと思います。
公立校中心の教育文化
まず、前提として押さえておきたいのは「沖縄は公立学校が中心」であることです。
多くの生徒が地域の公立小中学・高校へ進学しています。私立学校の数は本土の都市部に比べると少なく、受験の選択肢も限られています。このため、移住を考える際には、まず公立学校のシステムを理解することが重要です。
公立中高一貫校が人気
県内では、中高一貫校が人気を集めています。主な学校としては、開邦中学校・高等学校、球陽中学校・高等学校、与勝緑が丘中学校・与勝高等学校があります。さらに、2023年4月には本島北部で初めてとなる中高一貫の県立中学校名護高等学校附属桜中学校も開校しました。
〈2025年度入試の志願倍率〉
- 開邦中学校:志願者数597人/定員80人(7.46倍)
- 球陽中学校:志願者数368人/定員80人(4.60倍)
- 名護高等学校附属桜中学校:志願者数94人/定員40人(2.35倍)
- 与勝緑が丘中学校:志願者数120人/定員80人(1.50倍)
これらの学校は、6年間の一貫した教育プログラムを通じて、生徒の個性や能力を伸ばすことを目指しています。
例えば、開邦中学校は学術探究科や芸術科(音楽・美術コース)へ力を入れた教育を、球陽中学校は理数系や国際系の分野での活躍を目指す生徒の育成(SSH指定校)を、与勝緑が丘中学校は地域社会に貢献できる人材育成を特色としています。
人気の私立中学校と特色
一方、私立中学校では、昭和薬科大学附属中学校や沖縄尚学高等学校附属中学校などが代表的です。
昭和薬科大学附属中学校・高等学校は県内有数の進学校として知られており、理系教育・英語教育が強みです。沖縄尚学高等学校附属中学校は難関大学への進学実績が高く、グローバルな視点を育む教育に力を入れています。
また、特に公立と比べて特色ある教育や、きめ細やかな指導を期待する家庭にとっては、スポーツ・文化活動に力を入れている興南中学校や、宗教・英語教育や国際交流が盛んな沖縄カトリック中学校のような学校も魅力的です。
県外からの移住者が注意すべき点
沖縄の中学受験では、県外から移住する場合については次の3点も抑えておきましょう。
- 公立中高一貫校の受験資格は、原則として沖縄県内に保護者と共に居住している(または入学時までに居住する見込みである)こと
- (私立中学校の場合)編入制度や県外生向けの入試制度を設けている学校もある
- 「内申点」重視の沖縄受験
県外からの出願には、別途「県外等からの出願承認願」などの手続きが必要になる場合もあるので、各学校の要項等での確認もお勧めします。
また、沖縄の高校入試においては「内申点」が非常に重要視されます。このため、移住のタイミングによっては、内申点評価で不利になる可能性も考慮する必要があります。
では次に、押さえておきたい受験に関する基本ルールを見ていきましょう。
[参照:沖縄県 『令和7年度 沖縄県立中学校入学志願状況』]
沖縄の中学・高校受験で押さえるべき「学区」ルール
沖縄の公立校は基本「学区内受験」
沖縄県で公立中学・高校への進学を考える際、避けては通れないのが「学区制度」です。
県内の公立中学・高校(全日制課程の普通科)には、「通学区域」、いわゆる「学区」が定められています。原則として、生徒は保護者の住所地=生活の本拠地が属する学区内の高校を受験します。
この制度は、地域間の教育機会の均等化や、生徒の通学負担の軽減などを目的として設けられていると考えられます。
ただし、特定のコースや専門学科(工業科、商業科、農業科など)、公立中高一貫校は県内全域から受験が可能です。これらの学校は独自の入学者選抜試験を実施しており、学区の制限はありません。
学区外に受験する「学区外受験/越境入学」
一方で、高校受験については「学区外受験(越境入学)」という仕組みも存在します。
これは、もし学区外に入学しようとする場合、各普通科高校の定員数の10%以内に限り入学することができるというものです。
この「10%ルール」は、学区外からの受験者にとってかなりハードルが高く、学区内受験者よりも高い競争率を勝ち抜かなければなりません。特に進学実績が高いとされる高校や、交通の便が良い立地にある高校には人気が集中し、学区外からの受験競争も激化する傾向があります。
学区外受験の倍率が特に高いエリア
人気の学校では、当然学区外からの受験倍率も上がります。ここでは、改めて学区ごとに人気の学校をご紹介します。
学区 | 高校名 |
---|---|
那覇学区 | 首里高校、那覇国際高校、那覇高校 |
中頭学区 | 球陽高校、普天間高校 |
南部学区 | 向陽高校 |
北部地区 | 国立沖縄工業高等専門学校 (※県内全域から受験可能) |
- 那覇学区は教育熱心な家庭が多く、進学校が集まっていることやアクセスの良さなどから、学区内外を問わず多くの受験生から支持されています。
- 中頭学区も、那覇学区に隣接して人口が多い地域です。中頭学区自体が地理的に県の中心に位置するため、広範囲からのアクセスしやすいことも、那覇学区と同様に学区外からの志願者が多い一因といえます。
- 南部地域では、SSH指定校の向陽高校が進学実績や特色ある教育活動で南部地域の中核的な高校として知られており、学区外からも志願者が集まる傾向があります。
- 北部地域で注目すべきなのが、国立沖縄工業高等専門学校です。高専は通常の高校とは異なる高等学校と短期大学の両方の性格を持つ5年制(本科)の高等教育機関であり、*卒業時には準学士号が授与されます。*学区制度の枠組みには属さず、県内全域から受験可能です。工学系の専門教育と高い就職率・進学実績で知られ、毎年多くの受験生が集まる名門校です。
移住を検討する際には、希望するエリアの学区だけでなく、その周辺学区の状況も把握しておくことが、より広い視野での学校選択につながります。
学区外受験のリスクと注意点
学区外受験は、選択肢を広げる制度でもあると同時に相応のリスクと覚悟が伴います。
それは、
「合格のハードルが格段に上がること」
「情報収集の難しさ」
です。前述の通り、学区外からの合格者枠は定員の10%程度と非常に限られています。そのため、必然的に競争率は高くなり、学区内からの受験者よりも高い学力や内申点が求められる傾向にあります。
また、学区内の学校や塾に通っている学区内生に比べ、学区外生は意識的に情報を集めなければ情報格差が生じることが予想されます。県外から移住する際はこうした点も考慮して、移住地域を検討するとよいかもしれません。
地域ごとの学区はこちらをご参照ください▼
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受験にお勧めの地域解説はこちらの記事もあわせてご覧ください。
▼【2025年最新】沖縄移住Q&A:よくある質問まとめ〈転職・子育て・生活文化編〉
[参照:沖縄県立高等学校の通学区域に関する規則]
学区制度を補う仕組み
ここまで見てきたように、沖縄の受験事情には独自ルールがあります。学区制度や内申点重視は重要な要素の一つですが、その一方で次のような仕組みから選択肢を広げることも可能です。
〈学区制度を補う4つの仕組み〉
- 全県学区の専門学科:工業・商業・農業などは居住地に関係なく出願OK
- 特色選抜:2025年度導入。自己推薦で応募でき、全校募集枠の20~30%を充当
- 二次募集:毎年40校以上参加。約2,000名の募集枠・倍率は0.36~0.38倍と低水準
- 離島支援制度:離島居住者は学区外制限が免除。寮や奨学金などのサポートも充実
前述したとおり、専門学科は全県学区で受験が可能です。また、一次募集で定員割れ等があった学校が実施する二次募集では全県学区制となります。
さらに、離島から沖縄本島への受験は学区外制限10%が免除されるため、本島の高校に制限なく出願できます。高校生等奨学給付金、就学支援金などの経済的支援も充実しており、経済的な理由で進学を断念することがないよう配慮されています。
上2つ目の項目(特色選抜)は、特に押さえておきたい新制度です。
受験の選択が広がる「特色選抜制度」の開始
2025年度から導入される特色選抜制度は、これまでの推薦入試に変わる移住家族にとって特に有利な制度です。なぜなら、中学校長の推薦が不要となり、生徒が自己推薦できるようになったことで、転入後間もない生徒でも、地域実績や人間関係に左右されず、自身の能力や経験をアピールできるためです。すべての公立高校で実施されること、全体の募集枠の20〜30%が特色選抜に充てられることは、選択肢の広がりが期待されます。
このように、学区制度がある一方で、学区による壁を取り払って選択肢を広げられる仕組みもあり、居住地域に関係なく、子どもの可能性を最大限に引き出せる環境を提供しています。
これら受験を取り巻く仕組みを把握し、移住前に備えること/移住後に検討することを整理して子どもの将来を見据えることが大切です。
※【重要】教育制度は毎年更新される可能性があります。必ず最新情報をご確認ください
- 沖縄県教育委員会HP:入試要項、学区情報など
- 各市町村教育委員会:編入手続き、就学援助など
- 各学校HP:学校説明会日程、募集要項
- 沖縄県高等学校PTA連合会:保護者向け情報
移住前に一度、希望地域の教育委員会に電話相談することをお勧めします。
安心のために準備しておきたいこと
とはいえ、移住前にネット上で調べられる範囲には限りがあります。沖縄での生活が未経験の場合は特に、情報が少なく見えづらいことも。だからこそ、早めの情報収集と専門家のサポートが安心につながります。
- 沖縄専門の移住相談窓口や教育移住経験者の声を活用する自治体の移住相談窓口や、地域の子育てコミュニティなどに相談することで、現地ならではのリアルな情報が得られます。
- 転職も同時に検討する場合は、地元に詳しい転職エージェントに相談を教育環境と生活環境のバランスを考える上で、職場の立地も大切な判断材料になります。
まとめ:移住先は、子どもの受験事情も踏まえて検討を
沖縄への移住を考える際、住環境や仕事だけでなく、子どもの教育環境についてもしっかりと情報収集しておくことが大切です。沖縄ならではのルールを把握しておくことで、移住後のミスマッチを防ぎ、家族全体が安心した移住生活を送れます。
また、より具体的な詳細や個別の情報は各学校に問い合わせたりHPで最新情報をご確認ください。
弊社レキサンでは、地元に根ざした転職支援だけでなく、教育・住環境も踏まえた移住相談も承っています。お仕事探しとあわせて、ぜひお気軽にご相談ください。沖縄での新しい暮らしが、より良いものになるよう全力でサポートいたします!
【本記事の教育監修 紹介】
※本記事は、文部科学省・沖縄県教育委員会での行政経験を持ち大学受験予備校経営者でもある嘉数松悟先生と、沖縄県内の教育界で長年活躍してきた島村賢正先生、両名の豊富な経験と知識に基づき監修されています。

嘉数 松悟 先生
文部科学省、沖縄県教育委員会での豊富な教育行政経験を持ち、現在は地元沖縄の大学、高校で教壇に立ちながら、自ら大学受験専門オンライン予備校を経営。
多岐にわたる教育現場での経験を活かし、講演会や執筆、コンサル活動も展開するなど幅広く活躍。
◆ホームページ:https://www.classk-okinawa.com/
島村 賢正 先生
沖縄県立高等学校校長を歴任後、現竹富町教育委員として活躍。
県内教員を対象とする免許状更新講習の講師として「子どもたちがワクワクする自然観察の方法」など体験活動の指導法を担当し、実践的な自然体験学習の普及に取り組む。竹富町史編集委員として町史・波照間島の自然編の執筆や「知られざる波照間島の自然」の論考を担当し、八重山の自然・文化の記録編纂に携わる。